マンション紛争
はじめに
マンションなどの区分所有建物においては、多数の区分所有者の権利関係が交錯しており、また、生活環境も密になることから、区分所有者間のトラブルが生じやすい環境であり、現実に、管理費の支払いや、専有部分・共有部分の使用方法等を巡り、多数のトラブルが起こっています。
区分所有者間のトラブルについては、一次的にはマンションの管理組合が対応していると思われますが、トラブルの程度や態様が著しい場合には管理組合による対応が難しい場合があるかと思われますので、弁護士に相談して対応を協議することが、トラブルの早期解決につながるかと思われます。 また、トラブルの長期化・深刻化を防ぐという意味では、トラブル発生の初期において弁護士に相談し、適切な初期対応を取るということが非常に有益であると考えられます。
管理費滞納
区分所有者による管理費や修繕積立金の滞納は、マンショントラブルの中でも、もっとも頻繁に起こり得るトラブルです。 長期間にわたる管理費等の滞納は、管理組合の財政運営上望ましくないというだけでなく、区分所有者間の不公平感を生じさせる原因にもなるため、放置するべきではないと考えられます。
マンションの管理組合は、管理費等の滞納事案においては、訴訟等の法的手続きにおいて原告となることができ、法人化されていない場合でも、「権利能力なき社団」として原告として訴訟を提起することができます。 したがいまして、管理組合から滞納者に対して、未払管理費等の催告をしても滞納者による任意の支払いがなされない場合には、早期に、民事訴訟や少額訴訟等の法的手続きを利用して滞納者に対する債務名義を取得し、場合によっては、当該滞納者の区分所有権の競売についても検討すべきかと思われます。
また、判例において、マンションの管理費等の消滅時効は5年間とされておりますので、長期にわたる滞納者がいる場合には、消滅時効が成立する前に法的手続きを行う必要があります。
共有部分に関するトラブル
マンションの玄関、駐車場、廊下、階段、エレベーター、管理室等は、マンションの共用部分として、各区分所有者が共有持分にしたがって使用することができます。
これらの共有部分について、一部の区分所有者が、自らの私物をおいて独占的に占有していたり、他の区分所有者の使用を排除するような使用をしたりしている場合、他の区分所有者、又は管理組合は、当該区分所有者に対して、管理規約違反や共同利益背反行為を理由として、違反行為の停止や、原状回復を請求することができます。
実際に、裁判で争われた事案としては、バルコニーに設置された温室の撤去請求が認められた事案、バルコニー上に設置された看板の撤去が認められた事案、一部の区分所有者により設置された門扉の撤去が認められた事案等、様々な事案があります。
専有部分に関するトラブル
マンションの専有部分の使用に関しては、各区分所有者が自由に決めることが出来るのが原則です。 しかし、区分所有法では、区分所有者が「建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為」(共同利益背反行為)をしてはならないと規定しています(区分所有法第6条第1項)。
そのため、区分所有者の使用方法が区分所有者の共同の利益に反する場合には、全区分所有者又は管理組合は、当該区分所有者に対して、共同利益背反行為の停止等の請求をしたり、管理組合の決議(議決権の4分の3以上)をもって、専有部分の使用禁止や、区分所有権の競売、占有者に対する引き渡しを請求したりすることができます。 どのような行為が共同利益背反行為に該当するかについては、当該行為の必要性の程度、これにより他の区分所有者が被る不利益の態様、程度等の諸事情を比較衡量して判断されることとなります。
実際に裁判で認められた事例としては、(1)夜10時から朝8時までのカラオケ装置の全面的使用禁止を認めた事案、(2)住居以外の使用を規約で禁止しているマンションにおいて、保育室としての使用禁止を認めた事案、(3)専有部分を暴力団事務所として使用していた区分所有者に対して、競売請求を認めた事案などがあります。